この記事は、2026年5月時点で公表されている文部科学省・文化庁・日本語教育関連学会等の情報をもとに、試験対策用に整理したものです。最新情報は必ず公式資料で確認してください。
この記事の対象と特長
第2回(令和7年度=2025年11月2日)日本語教員試験では、**従来の参考書ではあまり取り上げられない「現代用語」**が複数出題されました。受験者からは「見たことがない用語が多かった」との声も。
この記事は 第2回で確認された現代用語を専門レベルで深掘り し、第3回(2026年11月8日予定)に向けた対策をまとめた完全ガイドです。
この記事の差別化要素
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 第2回出題実績 | 受験者報告から確認できる用語を網羅 |
| 提唱者と理論背景 | 単なる定義だけでなく研究系譜まで |
| 教室応用 | 実際の授業でどう使うか |
| 関連用語との接続 | 周辺概念とセットで覚える |
| 第3回予想 | 派生的に問われそうな関連用語 |
1. 第2回出題用語マップ
2. ジグソー法(Jigsaw method)
2.1 提唱者と理論背景
| 提唱者 | エリオット・アロンソン(Elliot Aronson, 1971) |
| 分野 | 社会心理学/協同学習 |
| 背景 | 米国テキサス州の人種統合学校で、生徒間の対立を緩和する目的で開発 |
| 日本語教育での位置 | 協同学習・タスクベース授業・CLIL等で活用 |
2.2 ジグソー法の手順
2.3 ジグソー法の効果
| 効果 | 説明 |
|---|---|
| 個人責任 | 自分の担当部分は他のメンバーが知らない情報なので、必ず学ぶ動機が生まれる |
| 相互依存 | 全員の貢献がないと完成しない仕組み |
| 対等性 | 「教える側」と「教わる側」が場面で交代する |
| 言語使用機会 | 説明・質問・確認の発話量が大幅に増える |
2.4 試験での問われ方
「ジグソー法の原型を提唱した心理学者は誰か」「ジグソー法と他の協同学習(バズ学習、LTD学習等)の違い」が頻出パターン。
3. スキャフォールディング(Scaffolding)
3.1 提唱者と理論背景
| 語源 | scaffold = 建築の足場 |
| 提唱者 | ウッド、ブルーナー、ロス(Wood, Bruner & Ross, 1976) |
| 背景理論 | ヴィゴツキーのZPD(最近接発達領域)の応用 |
| 基本理念 | 学習者が独力でできること その先の可能領域 を、足場(支援)を通じて到達可能にする |
3.2 ZPDとスキャフォールディングの関係
3.3 スキャフォールディングの具体技法
| 技法 | 例 |
|---|---|
| モデリング | 教師が見本を示してから学習者にやらせる |
| 言語的支援 | 「〜を使って」「次に何をする?」など発話補助 |
| ヒントの段階化 | 最初は強いヒント、徐々に弱める |
| 視覚化 | 図・表・ピクトグラムで補助 |
| 段階的撤去(フェーディング) | 学習者ができるようになったら支援を引く |
3.4 スキャフォールディングの2分類
- ハードスキャフォールディング:事前に計画された支援(教材設計に組み込む)
- ソフトスキャフォールディング:授業中に状況に応じて行う臨機応変な支援
4. トランスランゲージング(Translanguaging)と言語レパートリー
4.1 復習と深掘り
slug 33 試験「言語と社会」完全攻略 でも扱いましたが、ここでは応用試験での問われ方にフォーカス。
4.2 トランスランゲージングの教育応用
| 場面 | 実装 |
|---|---|
| 教科学習 | 難解な概念は母語で先に理解させる |
| グループ活動 | 同じ母語の子どもが母語で議論し、日本語でまとめる |
| 教材 | バイリンガル絵本・対訳付きワークシート |
| 家庭との連携 | 家庭での母語使用を肯定的に支援 |
4.3 「コードスイッチング」との違い
5. タスク補助の言語指導(Task-supportive language teaching)
5.1 概要
第2回で出題された応用的な教授法概念。TBL(タスクベース学習)の派生形として、言語学習をタスク達成の中で起こすと位置付ける。Focus on Form(タスク中の意味重視のコミュニケーションで、必要に応じて形式に注意を向ける)と密接。
5.2 関連概念マップ
| 類型 | 説明 | 代表的な教授法 |
|---|---|---|
| Focus on Forms(複数形のFormS) | 文法項目を体系的に教える | 文法訳読法・ALM・PPP |
| Focus on Meaning | 意味伝達のみに集中 | ナチュラルアプローチ・全没入型 |
| Focus on Form(単数形のForm) | 意味中心活動の中で必要時に形式へ注意 | TBL・タスク補助の言語指導 |
提唱者:ロング(M.H. Long)。彼のインターアクション仮説とも連動。
6. スキル習得論(Skill Acquisition Theory)
6.1 概要
第2読言語学習を技能習得の一種として捉え、認知心理学のスキル習得理論を応用したSLA理論。Robert DeKeyser が代表的。
6.2 ACTモデルと3段階
6.3 試験での問われ方
「宣言的知識から手続的知識への転化を何と呼ぶか」「自動化に必要な要素は何か」など。意識的学習と自然習得の二項対立を超えた現代SLAの中心概念。
7. クロンバックのα係数(Cronbach's alpha)
7.1 評価の信頼性とは
第2回の応用試験読解で出題された 評価論の用語。テストや尺度の 内的整合性(internal consistency) を測る統計指標。
| 提唱者 | リー・クロンバック(Lee J. Cronbach, 1951) |
| 指標 | テスト項目間の相関に基づき、テスト全体の内的整合性を0〜1で示す |
| 解釈 | α ≥ 0.7 で許容、α ≥ 0.8 で良好(一般的な目安) |
| 日本語教育での用途 | プレイスメントテスト、JLPT、各種診断テストの信頼性検証 |
7.2 信頼性と妥当性の対比
α係数・再テスト法・並行テスト法
内容的妥当性・構成概念妥当性・基準関連妥当性
よくある混同:「信頼性が高い=良いテスト」とは限らない。信頼性が高くても妥当性が低い(測りたいものを測っていない)テストはあり得る。
8. リキャストとフィードバック理論
8.1 訂正フィードバックの6類型(Lyster & Ranta, 1997)
| 類型 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| ①明示的訂正 | 誤りを直接指摘して訂正 | 「それは違います。『行きました』です」 |
| ②リキャスト | 誤りを訂正せず正しい形で言い換え | 「ああ、行ったんですね」 |
| ③明確化要求 | 理解できないと示す | 「すみません?」「もう一度?」 |
| ④メタ言語的フィードバック | 文法的説明を加える | 「過去形で言ってください」 |
| ⑤引き出し | 学習者に正しい形を出させる | 「昨日…?(言いかけて止める)」 |
| ⑥繰り返し | 誤った部分を抑揚をつけて繰り返す | 「行きましてた?(上昇調)」 |
8.2 リキャストの効果と論争
リキャストは現場でもっとも多用されるが、研究では効果が学習者に気づかれにくいとの批判もある。気づき(noticing)が起こらないと学習に結びつかない。Schmidt の Noticing Hypothesis とも関連。
9. その他の現代用語(試験対策に必須)
9.1 自己調整学習(Self-regulated learning)
学習者が 自分の学習過程をモニタリングし、計画・実行・評価する 能力。Zimmerman らが理論化。3段階:予見段階→遂行段階→自己内省段階。
9.2 WTC(Willingness to Communicate)
コミュニケーションを起こそうとする意欲。MacIntyreらがモデル化。第二言語学習の流暢さに影響する重要な情意要因。
9.3 ポートフォリオ評価
学習者の作品・活動・自己評価を時系列で蓄積して評価する手法。プロセス評価。CEFR/JFスタンダードと相性が良い。
9.4 ルーブリック(Rubric)
評価基準を明示した表。観点別・段階別に「何ができれば何点」かを示す。パフォーマンス評価で必須。
9.5 形成的評価/総括的評価
- 形成的評価:学習途中で行い、改善のためのフィードバックに使う
- 総括的評価:学習終了後に行い、到達度を測る
9.6 Noticing Hypothesis(気づき仮説)
Schmidt(1990)。意識的に気づいたインプットだけが学習につながる、という考え方。リキャストの効果論争の核。
9.7 アフォーダンス(affordance)
**ギブソン(J.J. Gibson)**の生態学的心理学に由来。環境が学習者に提供する学習機会。教室・教材・対話相手等が持つ。
10. 第3回(令和8年度=2026年11月8日予定)予想問題
練習問題(本サイト作成)。公式問題ではありません。
予想4択問題①(スキャフォールディング)
問:スキャフォールディングに関する記述として、もっとも適切なものを選んでください。
- ヴィゴツキーが直接提唱した教育技法である
- 学習者ができないことを教師がすべて代わりに行うことを指す
- ZPD(最近接発達領域)に対する支援として、ウッド、ブルーナー、ロスらが提示した概念
- 学習者の年齢に応じた教材選定の方針を意味する
正解:3
解説:1は誤り(ZPDはヴィゴツキー、スキャフォールディングはウッドら1976)。2は誤り(学習者の独力範囲を超え、ZPD内を支援する)。4は誤り。
予想4択問題②(クロンバックα係数)
問:テストの信頼性に関する記述として、適切なものを選んでください。
- クロンバックのα係数は、テストの妥当性を測る指標である
- 再テスト法は、同じテストを別の機会に行い結果の一貫性を見る方法
- 信頼性が高ければ、必ず妥当性も高い
- 並行テスト法は、テスト項目を1つずつ削除して相関を見る方法
正解:2
解説:1は誤り(α係数は信頼性の指標)。3は誤り(信頼性と妥当性は別概念)。4は誤り(並行テスト法は別形式の同等テストを行う)。2が正しい。
予想4択問題③(フィードバック)
問:次の教師の発話はLyster & Rantaの分類でどれにあたるか。
学習者「私、昨日駅に行く」
教師「昨日…?(待つ)」
- 明示的訂正
- リキャスト
- メタ言語的フィードバック
- 引き出し(elicitation)
正解:4
解説:教師が誤りを直接指摘せず、学習者に正しい形を出させる「引き出し」。1は直接訂正、2は埋め込み訂正、3は文法用語の言及。
11. 確認問題(一問一答10問)
練習問題(本サイト作成)。公式問題ではありません。
Q1. ジグソー法を提唱した心理学者は?
A1. エリオット・アロンソン(Aronson)
Q2. スキャフォールディングを提唱した3名は?
A2. ウッド・ブルーナー・ロス(Wood, Bruner & Ross, 1976)
Q3. ZPDを提唱したのは?
A3. ヴィゴツキー(Vygotsky)
Q4. トランスランゲージングを提唱した代表的研究者は?
A4. Ofelia García(オフェリア・ガルシア)
Q5. Focus on Form を提唱したのは?
A5. マイケル・ロング(M.H. Long)
Q6. スキル習得理論で「ルールを知っている」段階は?
A6. 宣言的段階(declarative)
Q7. クロンバックのα係数が測るのは何か?
A7. テストの内的整合性(信頼性)
Q8. 教師が誤りを訂正せず正しい形に言い換えるフィードバックは?
A8. リキャスト
Q9. 気づき仮説(Noticing Hypothesis)を提唱したのは?
A9. シュミット(Schmidt, 1990)
Q10. 自己調整学習の3段階を答えよ。
A10. 予見段階・遂行段階・自己内省段階(Zimmerman)
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